ビアレストランの親父、手作りレシピ集出版

ブリュッセルのカフェでビールが売りというのは当たり前過ぎるけれど、レストランでビールを使った料理を徹底して売り物にしているところはほとんどないらしい。下町のマロール地区、ルナール通りにあるその名も「レストビエール」はまさにそういう店。日本人観光ツアーの昼食立ち寄り先にもなっているようで、知る人ぞ知るという存在であるようだ。4月28日付『ラ・キャピタル』紙は、この店の御主人アラン・フェイト氏がレシピを基にした本を出版したニュースと共に、改めてこの愛すべき食堂の様子を紹介している(Le secret de la cuisine à la bière. La Capitale, 2011.4.28, p.10.)。
10年前にできたこの店、外見にはこれといった特徴はないが、一歩中に入ると、古いビール瓶やグラスが壁沿いにずらりと飾られ、レトロな感じの何とも言えない雰囲気が感じられる。ここで出される料理は、フラマン風カルボナード(牛肉のビール煮込み)など、もともとそういう一品というものだけでなく、あらゆるメニューで(おそらく隠し味としてだろうが)ビールが用いられている。ベルギーだけあって、子牛のブランケット(ホワイトシチュー)に入れるのはドゥブル・アンギャン、ストンプ(野菜入りマッシュポテト)やムール貝クロケットに使うのはラ・シュフといったように、料理ごとにビールの銘柄も様々に異なってくる。
フェイトさんはずっと前から、この店で提供している品々のレシピ集のようなものを出版したいと思っていたそうだが、実際に執筆を開始したのは3年前。前菜、メインからデザートまで、合計で約50のメニューが紹介されている。「一般の人たちが作れるレシピにするという課題がありました。簡単に作れるよう少しアレンジしましたが、自分だけが出せる雰囲気はそのままにしてあります」と説明するフェイトさん。彼の手によるイラストやポエムも添えられた、なんとも愛らしい本ができあがっている。
本書はブリュッセル市内約20の書店での限定発売。アルコールが弱い人は別として、一工夫された風味のベルギー料理に興味があれば、ぜひ手に入れたい1冊だ。ただ、「ムース・オ・ショコラ、エルキュール・スタウト風味」といった、本に載っていないメニューもまだまだあるそうなので、ルナール通りまで実際に出かけてみる機会も是非。