そうだ、ヴァカンス中だけ、誰かに貸そう。

このブログで時々取り上げているパリ発行の日本語フリーペーパー『OVNI』には、多くの三行広告が掲載されているが、しばしば見かけるのが「アパート貸します」又は「借りたい」といったお知らせ。日本人コミュニティの中で効率よく部屋の貸し借りができれば、これほど安全なことはないというのが趣旨なのだろうが、どうやらフランスではもっと一般的に、とりわけ夏季休暇中に自分のアパートを誰かに貸すことが、ネット情報の発達によって盛んになってきているようだ。6月21日付『ル・パリジャン』紙は、こうした動き、また貸主、借り手それぞれが注意すべき点などについて伝えている(Louer sa maison pour partir en vacances. Le Parisien, 2011.6.21, p.36.)。
ヴァカンス中に自宅やアパートを他人に貸す意味は、経済危機という背景の下、夏休みにかかる費用を埋め合わせる(場合によっては費用を上回る収入を得る)という点にあると言われる。記事が紹介する一つの事例は、パリ市内、マレ地区にある40平方メートル、2寝室のアパートを週1,000ユーロで貸して、その代わりに南仏アンチーブのプール付きヴィラを週600ユーロで借りるというもの。もちろん交通費や食費などいろいろかかるけれど、2週間、3週間とヴァカンス期間が延びれば延びるほど、ただ費用が浮くというだけでなく、逆にいい小遣い稼ぎの可能性も出てくるような印象だ。
最近はこうした目的に資するウェブサイトも各種みられる。「ホームリデイズ」というサイトは、フランス、イタリア、スペインを中心に情報を収集し、計7万件の短期賃貸物件が検索、申込可能となっている。物件の豊富さでは業界の代表格で、原則的に不動産を自分で所有している人からの登録のみを受け付ける(賃借人によるまた貸しは不可)というのが特徴。また、物件登録料として年間239ユーロを業者に支払う必要があり、やや経費がかかるものの、その分しっかりした物件のオファーであるというお墨付きが得られることになる。一方「ル・ボン・コワン」というサイトは対照的に、登録費用ゼロで賃貸物件を載せることができ、手軽さがあるが、信頼感という面ではやや劣るのは否めないところのようだ。
ただ、短い期間とは言え他人との賃貸借関係が生じるわけなので、注意点も少なくない。例えば、自宅を貸すことで得られる収入は(ごまかさない限り)課税対象となる。1年間の賃貸収入が一定額以下の場合は、その半額のみに課税される(残りは控除)という特典もあるが、課税対象であることに変わりはない。また、賃貸住宅を第三者にまた貸しすることは、そもそもの賃貸借契約にそのことが明示的に禁止されていない限りは可能と考えられるが、その場合も事前に家主に通知して、書面による許可を得ておく必要があるとされる。契約と言えば、ヴァカンス中の貸主と借り手の間の関係についても、契約を取り交わしておくことが義務ではないにせよ強く推奨されるとのこと。さらに、損害保険会社に対して、自宅を一時的に第三者に賃貸することに関し連絡しておいた方がよいらしい。こうして見るといろいろ手間がかかりそうだが、万が一の事態を想定すれば、貴重な不動産のこと、特に貸す側としては慎重な対応がベターということは間違いなく言えそうだ。