ブルターニュで今年もアオサが大量発生

夏だ、ビーチだ、海水浴だ!と、今年に限っては鉄道会社のCM的なイメージも日本ではそれほど流行らないような気がするが、これだけ暑ければやはり海辺に行く人が多くなる。ただ一方、海水の温度が上がってくるとしばしば発生するのが、赤潮やらアオサ(緑潮)の大量発生といった諸現象。こうした状況はフランス・ブルターニュ地方でも(どうやら日本よりも深刻な感じで)毎年のように起こっているらしく、7月4日付の経済紙『レゼコー』では、今夏も生じたアオサの大量繁殖について事情を報告している(Les algues vertes débarquent sur plusieurs plages Bretonnes. Les Echos, 2011.7.4, p.7.)。
ブルターニュ地域圏の担当者が実施している観測によると、6月15日現在で同地域圏の海岸に堆積しているアオサの量は2万㎥で、昨年同時期の約1万3,000㎥を大きく上回っている。それ以前の時期の日照時間が非常に多かったことに加え、水温が平年値より高かったこともあり、特に同地域圏西側のフィニステール県で大量発生が目立つと言われる。昨年、地域全体で最終的に集められたアオサは約6万㎥に及び、その処理には60万ないし70万ユーロを要したというが、現在の趨勢からいくと今年は昨年の水準を上回る可能性もある。
こうした状況が程度の差こそあれ何年も続いているというのだから、観光目的で海岸を訪れようとする人々に影響がないはずがない。コート・ダルモール県の主要な浜辺は、アオサの来襲によって軒並み観光業に大打撃を被っており、地域観光協議会は、たとえ近隣に緑潮が見られるような状況でも、浜辺での海水浴には問題がないといった趣旨の広報をネット上でやっきになって実施中という。まあ、敢えて緑潮のそばで水遊びしたいと思う観光客もそんなにいないとは思うけれど。
2009年8月にはなんと、サン・ミシェル・アン・グレーヴ海岸で、腐敗したアオサから放出された毒素によるものとみられる死亡事故が発生。これを期にフィヨン首相が同地を訪れ、国として「アオサ対策計画」を立ち上げることが決まった。海水中の硝酸塩を2015年までに30%ないし40%削減し、海岸及び河川の富栄養化を防ぐことを目標とするこの計画、総額1億3,400万ユーロを国、地方自治体及びロワール−ブルターニュ水利協議会が分担拠出して実施する予定となっている。硝酸塩は窒素肥料や畜産廃棄物に由来するものがかなりの部分を占めており、この発生源への対策が主要な施策。実はこうした公的な取組みは、ここ20年ぐらいほぼ継続して行われているのだが、今回は特に廃棄物のコンポスト処理に力を入れた対応が取られているようだ。
しかし、環境保護団体は今回の計画を不十分と断じ、海岸付近での豚の飼育を大幅に削減するといった徹底した施策を打ち出すことで、水中の硝酸塩を限りなく減らしていく必要があると主張する。一方農民たちは営農規模縮小となる対応策には反対で、コート・ダルモール県でこれまでにも硝酸塩を20%削減しているなどといった実績を前面に押し出している。
エコロジストと農民との見解の相違は当面平行線を辿るだろうが、今後アオサの発生状況を注視しながら、これまでの施策で十分か否か、判断を下さなければなるまい。パリなどの大都市部から比較的近いブルターニュ地方は、観光業にまだ潜在的な成長可能性があり、それを見逃すべきではないだろう。地域政策の観点という大局に立った政策決定がますます重要になってくると考えられる。