格安航空会社サイトでの不透明な運賃表示

ヨーロッパの代表的な格安航空会社イージージェットが、スイス関係便等で大規模な運航混乱を招き、社会的に批判された件は当ブログでも紹介している(2010年10月2日付)が、またもや同社が槍玉に上がっている記事を発見。8月11日付の『ル・マタン』紙は、このローコストキャリアがインターネットサイト上に提示する航空運賃について、掲載の仕方が著しく不適切(または不親切)な事例があることを明らかにしている(La facture s’envole. Le Matin, 2011.8.11, p.6.)。
紹介されている事例は、かなり読者を唖然とさせるものだ。例えば、ジュネーブとロンドンの往復チケット、今年の12月27日発、年を越して1月6日に帰着といった冬休み仕様のチケットが、約67スイスフラン(約6,700円)という価格表示でサイトに出ている。そこで、これは買いだと早速申込み、いざクレジットカードでオンライン決済しようとすると、何故か価格は約93フランに上がってしまっている。いつの間にか40%もの上昇。確かに93フランでも決して高いとは言えないけれど、どうしてこんな不正確な情報で客を釣るようなことが起こっているのだろう?
新聞記者がイージージェットに問い合わせると、当然のことながら担当者から反論がなされる。曰く、26フランの追加料金というのは異常でも不思議でもなく、16フランは管理手数料、10フランはカード決済手数料として頂戴しているとのこと。そして担当者は、手数料が別途かかることを隠しているわけではなく、文章の下の方の右側に、目立つようにはっきり書いてあると主張するのである。
しかし、他の会社の様子を見るに、イージージェットの運賃表示はやはり一般的なものとは言えない。スイス・インターナショナル・エアラインズ(スイス航空の後継会社)も、あるいはフランスを中心に展開するオンライン旅行会社ゴー・ヴォワイヤージュも、カード決済の際にその手数料や他の費用を上乗せすることはないと言明する。カード会社(ヴィザ・ユーロップ)に至っては、そうした手数料をカード会社側が受け取っているということはないし、むしろ「カード利用者を不公平に扱っていることになる」と批判的な意見を述べている(うろ覚えだが、日本では「カードで払うと高くなる」といった販売上の運用をしてはいけないことになっていたはず)。
今回の取材では、イージージェットが管理手数料を、「運営費用の全般的高騰のため」、去る4月に11フランから16フランへひそかに値上げしていたことも明らかになった。一方、決済手数料の負担は不可避なのかという記者の問いに対し、同社側は「特定の電子マネー(ヴィザ・エレクトロン)を御利用いただけば無料になります」と回答。しかしこのカードはスイス国内では非常にマイナーな1銀行(コーネルバンク)でしか取り扱われておらず、しかもヴィザ・エレクトロンの扱いは昨年6月で終了しており、その後継カードでも手数料が不要になるのかは今一つはっきりしないのが実状である。
要するに記事で知るかぎり、イージージェットのサイト上の表示は、不正とか詐欺とまではいかないにせよ、明らかに適切さを欠いているように思われる(日本でも「燃油特別付加運賃は別表示」とかやってはいるが)。ひょっとすると、新聞社側に(あるいは一般市民に)格安キャリアは信頼できないという予断があって、それがこういう告発調の記事になって出ているのではないかとも思えるが、徹底したコスト削減を行う中で(以前にブログで取り上げた、無理な機体繰りに基づく運航混乱等も含め)、運営全般にちょっと歪みが生じているというあたりまでは確かなことかもしれない。会社としては、いずれにしても低価格なのだから、乗客の側でもある程度の至らなさは甘受せよとでも暗に言いたいのだろうか。