「ミス・スイス農民」、1年間の活躍

ふるさと振興、観光宣伝のためのヒロインとして「ミス○○」的なものが日本の各地で選ばれ、活動している。地域の特産品を持ち、全国をPRして回ったりしている彼女たちへの地元の期待には大きなものがあるのだろう。今回はこれと似たような話題。8月11日付のスイス『ル・マタン』紙は、昨夏選ばれた「ミス・スイス農民」の活躍ぶりを紹介し、また1年の任期を終える彼女へのインタビューを掲載している(≪Je suis plus à l’aise en salopette≫. Le Matin, 2011.8.11, p.11.)。
「ミス・スイス農民」は、ジュラ州の州都ドゥレモン市の市役所や各種農牧業団体がメンバーになっている組織委員会が主催して、昨年から始めた企画。初代のミスに選ばれたのは、現在20歳、フラワーショップに勤めるララ・ボワシャさんで、この1年間、農家の世界を代表する女性大使として、各種イベントに参加するなど活動を続けてきた。愛らしく、かつ気取りのない彼女の活躍はめざましかったようで、ルネ・エイシェル委員長は「彼女はとても自然な感じでその役目を十分に果たしてくれました」と絶賛している。
ただ可愛らしいだけで、「ミス・スイス農民」のあるべき姿を自分で描けない人には、この称号はふさわしくない。ボワシャさんは新聞記者のインタビューに答えて、「農家の仕事は、とても田舎っぽいもののように思われているので、私はそうした見方を変えてもらえるよう努めてきました。農牧業はとても現代的なもので、動物の好きな人にはぜひお勧めしたいです。牛を見て怖がるようでは、試してみるまでもないと思いますけど」と発言している。自分の使命に忠実なこうした姿勢が、1年間の任務を有意義にこなす上でとても役に立ったのだろう。
女性大使を引き受けるに当たり、ボワシャさんはロングドレスを数着買い増ししたが、自分らしく、自然体であることを大事にして、派手な服装などには全く目を向けなかったという。そして、「ビキニよりもサロペット(つなぎの仕事着)の方がはるかに気楽です」ときっぱり。一方、この仕事をする中でもらったものを聞かれて、彼女は、「衣装一揃い、お花、帽子、スマートボックス(体験型ギフトカタログ)、…そんなものです。お金持ちになりたかったわけじゃないので」と淡々としている。このあたりの姿勢や雰囲気も、彼女の好感度を高めるのに大きく貢献したのではないか。
2代目の「ミス・スイス農民」にバトンタッチし、これからどうするかについて、「(4年来一緒に住んでいる)彼氏の家では50頭の乳牛を飼っていて、今も花屋で働いている時以外は牛の世話をしています。いずれ彼氏の両親から役目を引き継いで、本格的に農牧業をすることになるでしょう」と説明するボワシャさん。任期終了間近のこの夏も、フランス国境に近いセニェレジエ村で開催される馬の全国市場コンクールへの出席といった「公務」をこなす。あるいは今後とも、スイス農業の魅力を伝えるパーソナリティとして、折々登場してくれることになるのかもしれない。