無許可露店、一斉摘発を敢行も効果は不明

エッフェル塔周辺で営業許可を得ていない露店が不審な物売りを行っている件については、つい最近取り上げたばかり(当ブログ8月18日付参照)。その時の新聞記事では、ちらしやポスターによる観光客への(そうした物売りから土産など買わないようにという)啓蒙活動を警察が行っていると報道されていたが、もっと直截的な対策は取らないのかという疑問が出てくるのは当然だろう。8月30日付フリーペーパー『ヴァン・ミニュート』パリ版では、前日の29日に実施された無許可営業の露店に対する一斉摘発について、その効果及び限界等も含めて報じている(Parties de cache-cache au Trocadéro. 20 Minutes Édition de Paris, 2011.8.30, p.2.)。
作戦は大勢の観光客がいるなかで突如敢行された。人混みにまぎれていた150名の私服警官が、一斉に露店主に対する不審尋問を実施したのである。警官に声を掛けられた50人のうち、結局46名がそのまま警察に留置という処分になった。8月21日に同様の摘発を行った際は、警官に追い詰められた1人がメトロの電線に触れて感電死するという悲劇が発生、これに抗議して警察隊に対し石やビンが投げつけられるという騒擾が発生したが、今回は特にそのような事件、また抵抗といったものはなかったとされる。
パリ警視総監官房長であるジャン−ルイ・フィアマンギ氏は、「彼らの存在は古くからの問題なのですが、最近人数が増えて来ています。現在の状況は、パリのイメージという点で大変よくありません」として、問題の解消に一応積極的な姿勢を見せる。しかし現実には、200人から300人と言われる物売りの一掃はほぼ不可能。予告なしの摘発作戦を実施しても、不穏な雰囲気を察知した店主は商品を包んでどこかに消えてしまい、逃げ遅れた(!)奴だけがつかまるという展開が繰り返される。要は「敵もさるもの」、不審者と警察の追いかけごっこは果てしのない様相を見せている。
ある情報によれば、これら露店で販売されている物品は、パリ市外延のすぐ外側、セーヌ−サン−ドニ県オーベルヴィリエ市にあるアジア人経営の店から仕入れたものと言われる。また、彼らの大半は不法滞在者との情報もある。あるチュニジア人観光客は、「少なくとも、彼ら自身は盗みを働いてはいないし(註:売っているものの元は盗品という説があるがそれとは話が別)、ドラッグを売っているわけではない、というのは確かです」と皮肉交じりに語っている。
前のブログで紹介したとおり、今年3月から物品の無許可販売に対しては罰則が強化され、具体的には禁固刑もしくは罰金刑が課されることになっているけれど、今のところこれらの刑罰が額面通り適用される可能性が低いようだ。あり得るのは国外退去措置といったあたりだが、これすらも強硬に実施すれば激しい反発を買うのは必至。どの程度までシビアな対策を取るのか、パリ警察の対応が今後とも注目される。