毎年実施中、たばこ小刻み値上げの効果は

日本では今般、復興増税にたばこ税は盛り込まないということで決着を見たようだが、増税の話が持ち上がるたび、たばこが取り沙汰される状況に変化はない。フランスも似たような事情というべきか、こちらは実際にたばこの値上げがこのところ頻繁に生じていて、反喫煙団体は多少の評価、一方愛煙家は苦虫を噛みつぶすといった日々が続いているように見える。10月16日付の『ル・パリジャン』紙は、今秋実施されるたばこの値上げの効果やそれが与える影響予想などについて報告している(Demain, vous paierez vos cigarettes plus cher. Le Parisien, 2011.10.16, p.8.)。
フランスでの紙巻きたばこの平均価格は、2002年の3.60ユーロから短期間で急激に上昇し、2004年には5ユーロに。しばらくこの水準で落ち着いていたが、2007年に30サンチーム上がり、2009年から今秋までは毎年30サンチームという小刻みの値上げを続けて来て、10月17日からは6.20ユーロという水準に達している。これはヨーロッパ諸国の中では、アイルランド、イギリス、スウェーデンに次ぐ価格水準。もちろんブランド等によって値段には違いがあり、マールボロ(市場の4分の1を占め最も売れている銘柄)が6.20ユーロなのに対し、ラッキーストライクはこれより少し安く、5.70ユーロとなっている。
この価格上昇の主要部分は社会保障費に廻されることが決まっており、政府は年内で9千万ユーロの増収を予想。そして来年も、たばこ税率の引き上げ(新規実施される税制改正に盛り込まれる)及び更なる値上げを行うことで、6億ユーロの増収を得る見込みであり、政府としては財政健全化政策の一環として、なんとしてもこの施策を取り組む構えと見られる。なお、たばこ産業、それに街中のたばこ商もこの値上げの「恩恵」に浴する見通しとなっており、ある反喫煙団体の試算によれば、ブリティッシュ・アメリカン・タバコなどの各製造企業にとっては、総額1億ユーロ規模の収益増になるとみられている。
一方で当然、たばこの値上げが消費減、あるいはこの際禁煙に踏み切る人の増加といった結果につながらないのかという疑問もあるだろう。しかしこの点について、下院(国民議会)議員で社会保障関係予算法案の議会報告者を務めるイヴ・ビュール氏は、「少なくとも10%以上の値上げでなければ、消費(の減少といったところ)にまで影響は及びませんよ」と否定的な見解を示す。今年は30サンチーム、6%の値上げという水準なので、喫煙者のマインドに変化は起こらないというのだ。事実、今年と同様に30サンチームの値上げがあった昨年、たばこ(シガーを含む)の販売量は逆に0.14%増加している。『ル・パリジャン』紙が街行く喫煙者5人に実施したアンケートでも、今回の値上げを期にたばこを減らすだろうと答えたのはたった1人、3人は断固喫煙量を変えるつもりはないと宣言している(これはインタビューした先が悪かったのかもしれないが)。毎年30サンチームずつ小刻みに値上げするというのは、ある意味で政府の深謀遠慮と言えるけれど、反喫煙団体からは批判も招いているのではないか。
まあ、今年は財政再建に向けてなりふり構わずという要素もあるので、軽々しく判断や批評はできないが、今後もたばこ税、そしてたばこ価格の行方についてはいろいろ論議を呼びそうではある。