ヴァンセンヌ動物園、再開に向け始動

パリを代表する大きな動物園、ヴァンセンヌ動物園(同名の森の中にある)が、施設老朽化のため2008年11月に一時閉園してからはや3年。愛好家には少し寂しい日々が続いているが、最近になり2014年4月の再開園に向けた動きが始まっている。12月7日付『ル・フィガロ』紙は、この日実施される着工式を機会として、本園の改修動向と将来展望について説明している(Le zoo de Vincennes s’apprête à devenir plus vrai que nature. Le Figaro, 2011.12,7, p.17.)。
ヴァンセンヌ動物園は、パリ植物園や人類博物館と並んで、国立自然史博物館機構の一翼を担う重要施設。午後3時の式典にはローラン・ボキエ高等教育・研究相も列席し、新たなコンセプトのもとで再建される施設への期待が込められたキックオフになる。確かにここまで辿り着くためにかなりの時間がかかったけれど、最近実施されたアンケートでは70%以上が改修と再開におおむね賛意を表しており、また行政上必要となる建設許可証もここにきて無事に発行された。広さ14.5ヘクタール、年間約150万人が訪れる由緒ある動物園は、1億6,700万ユーロの予算をかけ、いよいよ具体的な工事の途を歩むことになる。
上記のように、新しい動物園はこれまでと違うコンセプトで展開されることになる。従来は伝統的な方式、つまり檻に囲まれた動物たちを入園者が観覧するというスタイルだったのを、今後は5つのバイオゾーンに観覧者が入っていき、それぞれの環境に即した動物に出会いながら、生物多様性を実感していくという基本方針の下で、建設が進められる(日本でも最近話題になる「参加型動物園」に近い考え方のようだ)。170種の動物が集まるほか、よりリアルなバイオゾーンを形成するために植生の拡大と見直しが実施され、大木・灌木の類は最終的にこれまでの1.4倍に増えることが想定されている。
というわけで、この動物園の敷地は大規模工事期間に入るわけだが、実は閉園以降3年以上が経った今もまだこの敷地内に残っている動物たちがいる。ダチョウやキツネザル、それに16頭のキリンなどがその代表例。パリ植物園付属動物園の園長で、ヴァンセンヌ動物園の将来計画も担当するミシェル・サン−ジャルム氏は、「これだけのキリンをまとめて引き受けてくれる園が見つからなかったのです。キリンの群れはお互いの結びつきがとても強いので、16頭を別れ分かれにするというわけにもいきませんでした」と事情を説明する。キリンたちは当面、周囲を防御柵で覆われた居留地の中で暮らすことになるが、1年後には最初に完成するバイオゾーンに移され、のびのびできるようになる予定だ。
また、3年後の再開園に当たっては、動物の構成がこれまでとはだいぶ変更される見通しとなっている。そもそも他所に引き取られていった動物たちを再びそっくり受け入れるという発想がないようで、とても人気のあったロドルフ、ペラジーという名のカバ(今はアルジェに移っている)を始め、クマ、ゾウ、ヒヒなどはここでは見られなくなる(大型の動物は広い土地が必要で、今後はそれがなかなか確保できないというのが主な理由らしい)。もっとも一方では、サイ、イベリア半島のオオカミ、パタゴニアのアシカ、アナコンダなどが新たに登場するそうなので、今後新たに人気を集める種も出てくるかもしれない。
「21世紀型の動物園」を標榜してつくられる新施設。オープンのあかつきには、これまで以上に人気のスポットとして市民から注目されるようになるのではないか。