ジョニー・アリディ、来年のツアー目指し意気軒昂

先日、当ブログで、スター歌手の高齢化がフランスで顕著になっているという話題を取り上げた(10月22日)が、そこで例に挙がっていた一人がフレンチ・ロックミュージシャンの代表格、ジョニー・アリディ。御年68歳の彼は、2年前に死線を彷徨う体験をしたものの、今ではすっかり回復し、2012年には32日間のコンサートツアー、さらに新譜の発売を予定しているという。12月5日付のベルギー『ル・ソワール』紙は、前々日にパリで行われた会見及び記者向けのイベントを取材し、今なお勢いと風格を兼ね備えるジョニーの現在に迫っている(Johnny: rock against the clock. Le Soir, 2012.12.5, p.37.)。
100名ほどが招待され、エッフェル塔の中のサロンで開かれた会見では、記者たちにシャンパンが振る舞われ、ジョニーもいたって気楽な雰囲気で質問に応じた。来年のツアーはフランスとベルギー以外に、ロンドン、モスクワ、テルアビブで開催され、さらに皮切りは4月24日のニューヨーク。新曲「自画像」の無料配信を実施するなど、挑戦的、実験的な企画にも意欲を見せている。今年9月にテネシー・ウィリアムズ作「地上の王国」で演劇デビューを飾ったというのも(映画は相当数出ているのに少し意外な感じだが)彼にとって新境地の開拓といったところなのかもしれない。ツアーに向けての(体力面などの)準備は?と訊ねられると、「特に準備なんかしないよ、スポーツをするくらいかな。ただね、たばこをやめたんだ。最近声がしゃがれかけて来ていたから」との返答。会見後には同じエッフェル塔のバルコニーで、プライベート・コンサートと称し13曲を歌い上げたが、その声は相変わらずパワフルであったという。
そうは言っても、2年前の経験がこのグレートシンガーにも多大な影響を与えたことは確か。椎間板ヘルニアの手術の予後が悪く、感染症にかかって手術を繰り返すことになり、何度も意識不明に陥った。現在の彼は、「自分自身と共に生きていくことを学んだよ。(2年前の)アクシデントで、人生や人間について考え直したんだ。今は毎朝目が覚めると神に感謝している」と、ある種の達観の境地を表している。ただ一方で引退の意思は全くなく、「大事なのは、自分が好きなことをすることなんだ。やるべきことをできるだけ高いレベルでやるのさ」と、エディ・ミッチェル(69歳で限界を感じ今年引退。10月22日付ブログ参照)と同じ道を歩むつもりはないことを断言する。
ちょうど今の時期は、来年のツアーで歌う曲を選定中のジョニー。1970年代から00年代まで自分の全キャリアからセレクトし、定番曲からめったに歌わないレアなナンバーまでいろいろ取り上げるつもりらしい。1回ごとのコンサートも実に大仕掛けで、200人以上が舞台制作に関わるステージとなる。体調を整え、エネルギッシュなステージを披露する彼の姿を、フランスをはじめ世界中の多くの人が待ち望んでいることだろう。