英米チェーン店のパリ進出にも明暗あり

11月24日の当ブログで紹介した、英国高級小売店マークス&スペンサー(M&S)のパリ再出店は、今のところ快調な滑り出しといった趣だが、2011年はM&Sの他にも、シャンゼリゼ大通りへの英米系高級チェーンの出店が目立った年だった。外国からの大規模店舗の新規参入は、世界でもトップクラスの威信を誇るこの商店街にどのように迎えられ、またどれだけの買物客を引き寄せているのか。12月27日付『ル・パリジャン』紙のパリ市内版は、クリスマス後のこの時期をとらえ、目抜き通りで新たな展開を図る各チェーンの現在についてレポートしている(Abercrombie et Marks & Spencer continuent à faire un tabac. Le Parisien – le Journal de Paris, 2011.12.27, p.3)。
年間で約1億人が訪れるシャンゼリゼに新たに進出したのは、米アバクロンビー&フィッチ(A&F、5月)、英M&S(11月、当ブログ既報)、そして米バナナ・リパブリック(12月)。これらの店は、以前からある衣服等の店舗群にいわば割って入り、ライバル関係となったわけだが、この点について商店街側では、歓迎ムードこそあれ、脅威とみなすような様子は感じられない。シャンゼリゼ委員会常務のエドゥアール・ルフェーヴル氏は、「どのチェーンにもそれにふさわしい顧客層がつくでしょう」と述べて、H&M、ザラ、セリオといった既存店の顧客を吸い上げることにはならないという見方を示している。
3店の先陣を切ったA&Fは、カジュアルでアメリカンなスタイルで多くの人々を魅了し、今でも入店待ちの長い列ができることがしばしば。店の中でほのかに香るパフュームも好評で、ベスト(100ユーロ〜)とシャツ(80ユーロ〜)が2大売れ筋商品として定着しているという。一方のM&Sも、開店直後の熱狂が過ぎ去った後、なおコンスタントに客を集めており、中に入るまでに20分待ちということも珍しくないようだ。カシミアのセーター(75ユーロ〜)や各種肌着などが人気を集めている他、食品売り場ではスコーンや「カスタードクリーム」(イギリスではビスケットの一種を指す)の売れ行きが好調。記事によれば、「店員がイギリス風にフランス語を発音することも魅力の一部をなしている」とされる(皮肉?それともユーモア?)。2012年春には新たに紳士洋品や子ども服の売り場が新設されるそうなので、さらに集客力は増すのではないだろうか。
なお、バナナ・リパブリックは、前記2者に比べるとまだそれほどパリっ子たちの人気を集めるという状況ではないらしい。フランスでの知名度が低いことがその主な要因とも言われるが、現在の店舗を起点に浸透を図っていけば、いずれは他店にも負けず劣らぬ売上げを出すようになるかもしれない。いずれにせよ、どの店もシャンゼリゼに新しい風をもたらしている様子なのが楽しげに感じられる。