世界一周100日間クルーズへようこそ

豪華客船の旅とは、お金と時間を共に豊かに享受できる人々のみに許される憧れの日々。ましてそれが世界一周となると、豊かさここに極まるという感じがする。地球をなんらかのルートで一回りする海洋ツアーにはいくつかの種類があるようだが、12月29日付の『ル・パリジャン』紙は、フランス・マルセイユを乗船地とする約100日間の旅について、その概要を紹介している(Le retour du rêve en paquebot. Le Parisien, 2011.12.29, p.28.)。
今回マルセイユから世界を周遊する旅を始めるのは、イタリアに本社のあるコスタ社に所属するコスタ・デリチョーザ号。正確には、サボナ(イタリア)、マルセイユ、そしてバルセロナで主な乗船者を受け付け、カリブ海パナマ運河、カリフォルニア、ハワイ、サモア、オーストラリア、シンガポール、インド、ドバイ、紅海、スエズ運河を経由して、サボナに戻ってくる全99日間の一周コースになっており、37か所の寄港地で合計300ものオプショナルツアーが用意されている。オーストラリアに立ち寄ることで、夢の五大陸制覇ということになっているのも一つの大きな特徴だ。乗船客2,300人に対し、スタッフは総勢934名。浴場、プール(3か所)、スポーツ用のコート、ローラースケート用とジョギング用周回コース、カジノ、映画館、劇場(800人収容)などの豪華設備を擁し、乗船料は1人当たり最低でも9,990ユーロ、スィートルームだと30,650ユーロにも達する(もちろん部屋代のみ)。コスタ社がこのような形でフランスを発地の一つとする世界一周ツアーを組むのは17年ぶりらしいが、人気は上々で、20か月前の予約開始時に既に申込みが殺到、出発前1年の時点では完売だったという。
コスタ・フランス−ベネルクスのジョルジュ・アズーズ社長は、「この旅で、お客様は時間をほしいままにし、我々は皆様を世界の発見へとお連れするものです」と説明し、「客船による世界一周は、お客様の体験、お客様が得る感動という点で極上のものを御提供します」と続ける。29日にマルセイユから妻のベルナデットと乗船するジャックは69歳の元船員。海上航行が仕事だった彼にとっても今回は特別な機会で、「これは人生で1回しか経験できないような思い切った贅沢です。でも、クラシックスタイルの世界一周と聞いたら、もう飛びついてしまいました」と語る。受付開始と同時に予約を入れた彼らは、既に長旅を共にする同じような老夫婦とネットのフォーラムで連絡を取り合っているそうで、3か月もの旅をして感動を一緒に経験する中で、交流を深めることができたらという気持ちもあるようだ。オルレアンで以前商売を営んでいたクリスティアンは、60歳の誕生記念に妻と二人分の豪華客船ツアーを贈られ、航海中にその誕生日を迎える。「世界一周は子どもの頃からの夢でした。もっともその時分は、自分の船で回るんだなんて考えていたんですがね」と顔をほころばせる。
コスタ・デリチョーザ号は4月6日に起点のサボナに戻り、その旅を終える予定。今日はいったいどの海、どの空の下を進んでいるのだろうか。
(付記)
コスタ社が航行させている別の大型客船で、座礁や火災などが連続して発生中というのはひどく遺憾な話。「豪華さ」の前にまず「安全」が第一、そこのところよろしくと心より願う。