ブリーチーズの魅力を紹介

しっかりしたレストランでフレンチをいただく際には、デザートの前にチーズが来るのが正式なフルコース。フランスの食事においてチーズの占める位置は確固たるものがあり、それだけその質や味などには人々のこだわりがある。見た目も美しい料理の写真とレシピが並ぶ月刊雑誌『キュイジーヌ・アクチュエル』1月号では、比較的知名度が高いと思われるブリーチーズを、コラム記事で改めて初心者にもわかるように説明している(Royal brie de Meaux. Cuisine Actuelle. 2012.1, p.25.)。
今回主に取り上げているのは、ブリーチーズの中でもとりわけその白色が美しいブリー・ドゥ・モー。パリの東北東40キロメートルに所在するモー市周辺で作られてきているチーズで、同じブリーチーズでも、パリ南東部、フォンテーヌブロー近くで生産しているブリー・ドゥ・ムランとは大きさや厚さ、それに味や香りが多少異なる。ブリーチーズの歴史は8世紀のシャルルマーニュ時代にまで遡ると言われ、1815年のウィーン会議では、本来の国際会議が膠着する中で各国チーズの品評が催されて、見事ブリーが王者に輝くという(嬉しいがちょっと困ったような)エピソードも残っている。現在ではフランスのと原則的に同じ製法により、世界各地でほぼ同様のチーズが作られているが、ブリー・ドゥ・モーは1980年にフランス政府から原産地統制呼称(AOC)を取得しているので、他の産地では名称としてそれを侵害することはできない。
一番目立つ特徴はその白さと大きさ。低温殺菌しない生乳を基に製造され、最低でも4週間の熟成期間を置く。一番美味しいのは6週間から8週間後ぐらい。軟質チーズの代表格というにふさわしく、店で選ぶときにもとにかく手触りがしなやかかつ柔らか、アンモニア臭のしないものが勧められる。食卓ではフルーツやトリュフと合わせると味も引き立つと言われ、またフライ用やフォンデュに使うのにも適している。ワインについてはブルゴーニュの赤、ボルドーではサンテミリオンやポムロールとの相性が良い。総じてその外見や味からして、ワインをそれほど食べつけているわけではない日本人にも楽しめるチーズと言えるのではないだろうか。
ちなみにこのコラムでは、他に3種類のチーズも一言サイズで紹介している。オーヴェルニュ地方産で円筒形が印象的なアンベール・ブルーチーズ(ロックフォールよりこちらがいいという愛好家も多いという)。スイス北東のアッペンツェル地方で、700年前からその製法が秘伝として受け継がれてきたアッペンツェラーチーズ。そして、サヴォワの山間部で作られ、脂肪分の多さに特徴のあるトムチーズ。日本でフランスから直輸入したチーズはどうしても高くつくらしいが、機会があればやはり本場の味を、ワイン片手にじっくりと楽しんでみてはいかがだろう。