ゾウ専門の新型動物園計画

陸に生きる哺乳類として最大の動物であるゾウは、その巨大さと動作の愛くるしさでいつでも皆の人気者。動物園ではもちろん、サーカスで達者な芸を披露するゾウたちは、観客の圧倒的な拍手を浴びている。スイスでは、このゾウに特化しつつ、今までにない構想の下で新たな動物園を作ろうという動きが高まりつつあるらしい。3月6日付の『ル・マタン』紙は、新しいプロジェクトに邁進しているサーカス経営者を取り上げ、その熱意のありかに迫っている(≪Un parc inédit pour mes éléphants≫. Le Matin, 2012.3.6, p.7.)。
今回話題の人物はフランコ・クニー氏。1919年以来の伝統を有し、現在も3月から11月までスイス全土を巡回しての公演を続けている「クニー・スイス・ナショナル・サーカス」の共同経営者だが、近年はとりわけゾウの魅力に取りつかれ、サーカスとは別にゾウをフィーチャーした施設の設置に熱意を持っている。最近彼は、チューリヒの南東約30キロ、サーカスが冬季(興行を休む時期)の滞在地としているザンクト・ガレン州ラッペルスヴィル−ヨナ市で、かつてサッカーコートだった土地を新たに獲得した。買収したこの土地と隣りにあるサーカス付属の子ども向け常設動物園の土地とをあわせ、新施設を構想すべく余念がない。
つい先頃、アジアにおける動物園等の視察・調査旅行を終えて帰国したクニー氏は、旅の間にもいろいろインスピレーションが湧いたのか、7,000平方メートルの敷地で10頭のメス(群れをなす場合多し)、1頭のオス(単独行動を取る傾向)のゾウを飼い、人々に見てもらうことを考えていると自らのプランを語る。全体イメージとしては東洋的なエキゾチズムを取り入れ、例えば400人収容のタイ料理レストランを園内に設置する。さらにスイス国内では初めて、ゾウの背中に乗っての散歩体験を企画するなど、柵越しに見るのでなく、できるだけ近くでゾウと触れあえる形での園内構成のアイディアなども提示している。
ここで飼うゾウとしては、「5000年前から人に飼育されてきた歴史があり、今でも人に相対的に慣れている」という理由で、アフリカゾウではなくアジアゾウを選択。そして、彼らの世話と飼育に当たる人材をタイから招へいする予定とされる。あれこれとプランニングに熱中するクニー氏、サーカスの方はもう一人の共同経営者である息子にほぼ完全に任せる意向とのことなので、「ゾウの楽園」がスイスに花開くのもそれほど先ではないのかもしれない。