拡大傾向ながらも道半ばの自然派食品

自然派食品をめぐるフランスの動きについては、当ブログでこれまでに何回か話題を扱ってきているので、今日は簡単な紹介のみに留めておこう。6月6日付のフリーペーパー『メトロ』紙は、引き続き増勢にあるとみられている自然派食品について、具体的な数字を挙げながら動向を示している(La filière bio franchit le cap du million d’hectares. Metro, 2012.6.6, p.15.)。
自然派食品の生産と流通に関する公的機関「アジャンス・ビオ」の調べによれば、いわゆる有機栽培が実施されている農地は、収穫物に対する消費者からの需要が堅調であることを受けて拡大しつつあり、2011年5月にはフランス全土で100万ヘクタールを超えた。一つのトレンドを成してきているのは確かだが、一方で全耕地面積に対する比率ではまだ3.5%に過ぎず、農地全体としての浸透度は高いとは言えない。
また、2011年における自然派食品(アジャンス・ビオによって認証を受けている食品)の売上高は、前年比で11%増となり、40億ユーロに達している。全ての食品売上額に対する比率はこれも2.4%と、御世辞にも大きな数字ではないが、エコ志向、ナチュラル志向を持つ消費者の支持を獲得しつつあるとは言えそうだ。自然派の割合が高い食品はこれまで牛乳と卵が代表格だったが、近頃ではパンやワインでも多少増えてきており、昨年の数字をみると7.4%の葡萄畑で有機栽培法が採用されており、自然派の小麦を使ったパンを提供する店は前の年より30%増を示している。
さらに、これまで自然派食品が売られているのは主にスーパーやハイパーマーケットだったが、そのあたりにも変化が出てきた。アジャンス・ビオ会長のエリザベート・メルシエ氏は、「全体の半数の(有機栽培を実施する)生産者が、農地又は市場で、消費者への直接販売を実施するようになってきています」と昨今の動きを評価している。確かにせっかく自然派を謳って生産しても、生産者と消費者、お互いの顔が見えない中で流通が進むだけでは本来のあり方とは言えないだろう。都市と農村とのつながり方、そうしたところまで有機栽培の議論が広がっていけば、また新たな展開があるのではと思わせる。
2007年に環境関連の政府関係者及び各当事者が集まって議論をした「環境グルネル懇談会」(註:「グルネル」の名称は、1968年にパリ・グルネル通りにある労働省で労使和解がなされた「グルネル協定」に基づいている)での合意内容には、「2012年に自然派栽培が行われる耕地が全体の6%に達する」という目標値が含まれていた。昨年時点で3.5%という割合ではこの目標を達成するのはほぼ無理であり、つまり有機栽培促進のペースは予定より確実に遅れているわけだが、少しずつとはいえ進展はしているということを、とりあえずは評価しておくべきなのだろうか。