コニャックの販売堅調、明日への展望は

レミーマルタンと言えば、おそらくヘネシーを超えて、コニャック(フランスのコニャック地方で作られるブランデー)の代表格と言える銘柄。一方コアントローはオレンジの香りのするリキュール(ホワイトキュラソーの一種)だが、こちらの知名度は若干低いかもしれない。これらを生産するレミーコアントローグループ(3月14日の当ブログでも取り上げた)は、酒造企業として超大規模とまでは言えないが、その生産と売り上げにおいて近年の努力がようやく実り、優れた実績を残し始めているようだ。6月13日付の経済紙『レゼコー』は、業績好調となってきた同グループの現状、経営戦略そして今後の展望について報告している(Rémy Cointreau monte les prix et bat des records. Les Echos, 2012.6.13, p.21.)。
レミーコアントローグループの2011年の売上高は、前年を約13%上回る10億2,600万ユーロ。業務利益は2億800万ユーロ弱に達しており、利益率は20.2%と極めて高い。さらに借入金残高は最近10年間で著しい減少が見られ、昨年は2億ユーロという規模に落ち着いている。総じて財務状況は非常に安定し、堅実かつ成長力のある経営が実現してきていると言えるのではないか。
近年の同グループ製品の販売方針は、高級品への相対的なシフトを軸としている。特に売上高の57.7%を占めるレミーマルタンについて、既存製品を値崩れさせずむしろ価格を維持ないし引き上げると共に、高価格帯の商品に力点を置くという戦略を取ってきたのである(ちなみに、コアントローとその他ラム酒等を併せたリキュールの売上高は全体の21%)。この戦略がブランド化という点で功を奏し、売上げを伸ばしかつ利益率もしっかり確保するという結果を生んでいるように見える。
こうした状況を踏まえ、ジャン−マリ・ラボルド社長を中心とする首脳陣は、新たな経営戦略の展開に着手し始めている。その要点はおおむね3つ。広告宣伝の強化、他社が保有するブランドに対する投資及び同グループへの併合、さらにアジア諸国を中心とする重点地域への浸透である。いずれも、比較的余力のある現在の財務状況を踏まえ、適切な形で投資を進めいわば「打って出る」という形の戦略になっていると言えるのではないか。
このうち他ブランドの取り込みについて、ラボルド社長は、「我々のラインナップを補完する商品で、国際的な拡販の展望があり、当グループの平均利潤率を確保できるようなブランドにしか興味はありません」と言い切り、あくまで堅実性を維持する方針を示している。一方アジアへの進出は、かつて(例えば10年前)レミーマルタンがそこで持っていたプレゼンスを今一度回復させようとの取り組みでもある。中国、ロシア、インド、ブラジルなどで、現在コニャックがそれほど飲まれているとは言えないが、逆に言えばそれは成長余力がまだ残っていることの反映。今後は営業活動を大幅に強化することにより、世界経済の中で勢いのある各国での地位を少しでも伸ばしたいという方向性が明確にうかがえる。
ところで、上記で挙げた「アジア諸国」の中に、日本は(記事では)必ずしも明示的に含まれていないけれど、日本でも他の酒と比べてコニャックに勢いがあるとは言い難く、その分売り方の工夫次第で伸びる可能性を秘めているように思う。レミーコアントローグループが、コニャックの美味しい飲み方、あるいは粋なシチュエーションなどを紹介してくれることで、また新たな酒文化が開ければ面白いのではないだろうか。