夏に飲むロゼワインの魅力

いろいろ言っても、やはり夏はワインが飲みづらい。日本ではワインクーラーを使わなければ、赤ワインにとっての適温は上手に確保できないのではないか。その点ヨーロッパなら、地下室にでも入れておけば比較的容易に適温が保てるという利点はあるが、それでも最近の温暖化の流れ(パリでも冷房が大普及)を受けてか、あるいはワインとの付き合い方が変わってきているのか、敢えて多少冷やして飲むワインとして、ロゼの評価が上がっているとされている。7月10日付のフリーペーパー『メトロ』紙は、最近のロゼワインの人気ぶりを報告すると共に、お薦めのワインもいくつか紹介している(Les rosés font tout pour vous plaire. Metro, 2012.7.10, p.10.)。
従来は「味もわからない大雑把な旅行客が愛好するいい加減な飲み物」との評価が誇張ではなかったロゼも、今では一定の評価を得るようになり、幅広い機会に飲まれるようになっているらしい。カジュアルであることが、気軽な雰囲気で飲むというシチュエーションに合っている側面もあり、マグナムボトルやボックスワインなどの形で旅行地に持参するといったケースも多いようだ。しかも、アジア風エスニック料理も含め、どんな食事にも合う(つまりワインの側にそれほどのこだわりがない)ことも、現代となってはそれなりに重要な美点となっている。
フランスでロゼワインの主要産地とされるのは、プロヴァンス地域、ロワール河流域、ラングドック及びローヌ河流域の3か所。プロヴァンスのロゼは香りに優れ、アペリティフによく用いられるほか、生の魚、鶏肉やウサギといった身の白い肉料理などに合う。ロワールはワインの表情もいきいきとしており、山羊のチーズやソーセージ類などと合わせてじっくり味わうのがおすすめ。一方ラングドックのワインは少しピリッとした感じがあるのが特徴で、タジンやピザなどにもベストマッチするのが興味深い。
一般的な購入時のヒントとしては、最低でも4ユーロ以上のロゼワインを購入することが推奨されている。10ユーロ以上ならかなり高級なワインとなるが、4から8ユーロ程度でも充分美味しいロゼが手に入る。逆に4ユーロ以下のものは避けた方がよいというのが『メトロ』紙のアドバイス。そして、赤ワインなどと大きく違い、基本的に若いヴィンテージの商品を手に入れて、若いうちに飲みきってしまうのがマストとも言われる。記事ではさらに、プロヴァンス地域産でフルーティーな香りが印象的な「シャトー・レウーブ」など、4種類のワインを一押し銘柄として挙げている。
どうやら、現代人のライフスタイルに合った消費の仕方ができるという点で、ロゼワインがことさらに取り上げられているということは言えそうだが、一方で品質の向上も確かに進んではいるのだろう。日本でも、のんびりゆっくり夏のワインを楽しむのなら、ロゼという選択肢もかなりお勧めになっているということだろうか。