人々にとって「富裕」とは何か?

前のブログで、フランスの現政権では富裕層に対する増税などが企図されている、と書いたが、そもそも富裕という概念は相対的なものだ。人によって、あるいは政策判断によって、「お金持ちである」「豊かである」とされる範囲はどうにでも変わってくるのではないか。2月7日付の経済紙『レゼコー』は、一般のフランス人にとって「富裕(層)」とは何を意味するのか、アンケート結果をもとに素描している(Pour les Français, on est riche à partir de 6,500 euros net par mois. Les Echos, 2013.2.7, p.6.)。
同紙が発行する月刊誌『アンジュー』への掲載を目的として、IFOP社(フランス世論研究所)が行った調査によれば、税や社会保険料を差し引く前の所得で見た場合、平均で見て月額6,500ユーロ(1ユーロ=125円で換算して812,500円)以上が裕福とされる。2年前、2011年にはこの額は6,308ユーロだったから、近年経済危機が深まっているにもかかわらず、意外にも富裕層のボーダーラインとなる所得額は増えていることになる。
もちろん上記はあくまで平均であって、人々の感じ方はさまざま。容易に推定されることだが、稼ぎが多い人ほど、また高齢になるほど豊かと考えられる収入額は上がっていく。18歳から24歳までの年齢層では4,398ユーロ(約55万円)の所得でリッチと言えるのに対し、65歳以上では7,872ユーロ(98万4,000円)ないとそうみなされない。一方、個々人の政治的傾向による差異は想定したほど大きくないようで、左派支持者で6,833ユーロ、右派支持者で6,535ユーロという結果が出ている。これはつまり、伝統的な政治的支持者像(経営者は保守的なのに対し、労働者は左派を支援する)が既にあまり有効ではないことの一つの証左なのかもしれない。
なお、暮らし向きの良しあしを決めるもう一つの要素である資産については、平均で純資産額(いわゆる資産額から負債額を引いた金額)が63万2,180ユーロ(約7,900万円)以上の場合に富裕とみなされるとの結果が出ている。何度も言うように感じ方の問題だからなんともいえないが、人様からリッチ、裕福と思われるためには、やはり相当の所得なり資産がないといけないというわけだ。