パリのキオスクの経営危機が深刻な様相に

パリに行くと必ずお世話になるのが、街中に約340店舗あるというキオスク(新聞スタンド)。もちろん雑誌や新聞を買うために立ち寄るのだが、小屋の外壁に近刊雑誌の特集の紹介などが大きく宣伝されているのを見るのも楽しい。このキオスクがここ数か月、流通上のトラブルに巻き込まれて窮地に陥っており、これを打開するための方策も検討されているという。2月21日付のフリーペーパー『メトロ』紙パリ版では、こうした状況について概要を報じている(Le coup de pouce aux kiosquiers. Metro Paris, 2013.2.21, p.9.)。
混乱の原因は、フランスにおける新聞雑誌流通の75%に関与する企業、プレスタリス社における大規模な労働紛争。従業員2,500人の半分を削減しようとする経営側の目論見に労働者が反発し、しばしば出版物の流通をストップさせる挙に出ている(昨年10月からこれまでに計41日間ともいわれる)。そのあおりを直接食うのがキオスクで、とにかく毎日確実に入荷すべき主力商品が到着しないのだから、商売が全く成り立たなくなってしまうのだ。仕方なく各キオスクの店主も、(新聞雑誌が来ない日に)一日一斉休業を実施して抗議の意を表しているが、所詮はプレスタリス社の争議が片付いてくれないとどうにもならない。
こうした状況を重く見たパリ市役所では、民間運営であるキオスクの支援救済を実施する方針を示している。3月の議会で可決されれば、パリ新聞出版相互扶助センターを通じて総額20万ユーロがキオスク店主に配分される予定だ。「キオスクは街の活性化、都市のイメージの向上に大きく寄与しているほか、新聞雑誌の出版流通を成り立たせるための活発で欠かすことができないネットワークを成しています」と市役所の担当者は説明する。2011年以降これまでに、土産物や菓子類の販売を新たに許可して業務多様化を促す方向での規制緩和を講じるなどしており、今後はヴェリブ(貸出自転車)チケットの販売委託なども検討されるとのこと。もっとも、新聞雑誌が来ない中でどの程度これらが商売の足しになるのかについては疑問も少なくないだろう。
キオスクを束ねる団体である全仏書籍新聞販売業組合のミシェル・アルテミズ氏は、市役所の支援表明は当面の危機(資金繰りなど)を回避するなどの点で大いに有り難いと歓迎の意を表明している。1日14時間、週6日という重労働をこなすキオスクの店主たち。流通が安定して日々の商売が確実になり、街並みのシンボルとしても貴重な存在である各店舗の活気が戻る日が待ち望まれる。