路上販売車両は街に定着できるか

日本の大都市部で弁当などの飲食物を路上販売するミニトラックが激増し、利便性が評価されると同時に衛生面や道路使用の観点で少なからず問題化しているのは御承知のことだろう。似たような動きはパリではどうも始まったばかりというところらしい。5月3日付のフリーペーパー『メトロ』紙パリ版は、徐々に街角に出現しつつある「フードトラック」の先駆的な動向をレポートしている(Les food trucks occupant l’espace. Metro Paris, 2013.5.3, p.10.)。
現在、私有地でないいわゆる路上で飲食物販売を行っている車両はパリ市内で10台程度と言われており、記事ではいくつかの業者を紹介している。「湯気立てるトラック」という意味のフランス語を企業名にしたル・カミオン・キ・ヒュム社では、パリ市役所から道路使用許可を取得した上で、市内に立つ定期市の場でハンバーガーを売っている。役所当局では、「路上が全般に混雑を極める状況下では、3台以上許可することはできません」との方針を示したとのこと。定期市のない日には企業の敷地や私有地内で許しを得て営業を行っており、1年ぐらい前からは国立図書館そばのMK2(シネコン)の傍で開店していることが多いようだ。一方イタリアンを扱うモッツア・エ・コー社は、セーヌ左岸の中心部、アナトール・フランス河岸で定期的に出店を果たしているという。
こうした動きに対して既存店舗は早くも警戒姿勢を示している。全国ホテル・レストラン同業組合(サンオルカ)のカフェ部会長、マルセル・ブヌゼ氏は、「この流行現象は、我々にとっていずれは問題になりかねません。当方は最低でも月4,000ユーロもの家賃を払って営業しているのですから」と発言している。これに対しモッツァ・エ・コー社の共同創立者、アルチュール・ギャンバール氏は「私たちは補完的な立場にあり、同じ客層をターゲットにしているわけではありませんし、(トラックという性質上)一つの所に居座ってしまえるわけでもないのです」と弁解しているが、まあ外部の者から見ると、たかだか全市で10台程度のトラックにそんなに目くじらを立てなくてもという気がしないでもない。ギャンバール氏が示唆するように補完性を発揮させ、共存共栄する道がまだいくらでも考えられるのではないだろうか。