民放ラジオ局ユーロップ1、首位奪取を目指して

フランス有数のコングロマリット、ラガルデール・グループの一員を成す有力な民間ラジオ局であり、1955年開局以来の歴史を誇るユーロップ1は、現在同じ総合放送分野においてRTL(民放)やフランス・アンテール(公共放送)に聴取率で後塵を拝し、さらにモナコを拠点とするRMCの猛追すら受けていると言われる。その名の通り「1番」を目指すためには、番組制作等でどのような戦略を進めるべきなのか。5月15日付『ル・モンド』紙の別刷り経済面では、3月に新たな社長として着任したばかりのファビアン・ナミアス氏に、この夏休み明けにスタートする新編成への意気込みや狙いなどを訊ねている(≪Europe1 doit marier information et insolence≫. Le Monde Éco et Entreprise, 2013.5.15, p4.)。
同社のドゥニ・オリヴェンヌ会長は2年前に、番組聴取占拠率10%を確保することを目標に掲げたが、今のところ達成への道のりは遠く、むしろ今年の第1四半期には聴取者数を8.5%も減らしてしまったとされる。この点について問われたナミアス社長は直接には弁解しなかったものの、この間リスナーの若返りを果たしており、それはスポンサーの意向にも沿うものである、今後も番組改編等によって聴取者拡大を目指すが、それが実を結ぶのは早くても2年後ぐらいだろうといったことを述べている。あまり業容に恵まれない中で就任した新社長といった趣だが、まずは手持ちの資源を足掛かりに、少しずつでも前進していこうという意志は伝わってくる。
具体的にはインタビューの中で、今秋の改編を主として平日の朝番組と昼番組について実施することが明らかにされた。まず、今は充分な聴取率が取れていない朝の情報番組には、民放テレビM6の経済トークショー「キャピタル」などで活躍中のトマ・ゾット氏を登場させる。社長は彼について「優れたジャーナリストで、現地取材の経験を積んでおり、(ニュースチャンネルである)BFM-TVの情報イブニングゾーンを定着させた実績もあります。前回の大統領選で候補者にインタビューした際にとりわけ頭角をあらわしました」と評価している。
さらに朝からお昼にかけて放送しているワイド番組には、テレビ・ラジオの司会者として10年以上のキャリアを持つシリル・アヌーナ氏を起用する方向で打診中だ。この枠は超ベテランのミシェル・ドリュッケール氏が一時休養(サバティカル)を申し出たため、代わりの人材が求められていた。アヌーナ氏はまだ39歳で、ドリュッケール氏からの引き継ぎは大変な若返りとなる。リスナー層が離れてしまうのではないかと危惧する向きもあるが、ナミアス氏は、それも局にとって挑戦の一つだから、と意に介さない。一方、昼の報道・情報プログラムについては新司会者を投入し、同時に内容も刷新する。今はM6で日曜夜のドキュメント番組に出演しているヴェンディ・ブシャール氏が新たに担当し、ニュースワイド、中継、そして聴取者との電話トークを軸とした番組として再スタートを切る意向という。
新社長がはっきりと主張するのは、ユーロップ1が報道と娯楽を並立させて放送するステーションであり、決してそれを安易に混ぜこぜにする(いわゆる「インフォテインメント」のように)つもりはないということ。報道は堅実にしっかりと、一方でエンタメ系の番組はとことん面白くといったメリハリを目指しているのだろう。彼の意図、そして意気込みはよく伝わってくるのだが、それが局としての確固たるアイデンティティにつながり、ひいては他局を押しのけて聴取率アップをもたらすかどうかは、正直に言って「やってみないとわからない」ということのように思われる。