自動車市場は相変わらず停滞

自動車生産の実績と言えば一種の景気バロメーターにもなっており、それこそリーマン・ショック直後は世界的に著しい低迷を示したことで知られる。それから約5年、フランスをはじめとするヨーロッパの現状はどうなっているのか。6月19日付の『ル・モンド』別刷り経済面では、相変わらず全体としては浮上しきれない欧州の自動車市場について検討している(Le marché automobile européen poursuit sa dégringolade. Le Monde - Éco & Entreprise, 2013.6.19, p.5.)。
欧州自動車製造工業会の調べによれば、2013年5月におけるヨーロッパの自動車販売台数は、前年同月比で6.8%の減少となり、この月としては1993年以降最悪の水準を記録した。引き続き厳しい結果が出ていることについて、自動車関連のコンサル会社であるポルク社のアナリスト、ベルトラン・ラトコ氏は、失業率がまだ全体として増勢傾向にあり、構造改革もおぼつかないという背景の下で、欧州経済がやはり立ち直ってはいないことが決定的要因であるとの見解を示している。情報分析企業IHS社のカルロス・ダ・シルヴァ氏も、今後は事態の好転が見込まれるとしながらも、年内の自動車市場回復には懐疑的だ。
国別にみると、英国だけは11%増と好成績を挙げているものの、フランス、ドイツ、イタリアはどこも10%前後の減少を余儀なくされている。企業別では、ルノーが17.5%減、PSA(プジョー及びシトロエン)が13.2%減と深刻な状況にあり、フォルクスワーゲンでさえ2.8%の後退を示した。ただこうした過酷な状況は、小型車ないし高級車といった特定の車種に特化した企業ではさほど見られない。ルーマニアで低価格車を専門に製造するルノーグループのダチアはなんと16%の販売増を示しているし、アウディBMW、他方では韓国のヒュンダイやキアなどは、台数こそ減っているもののその幅は小さい。長期的に見れば、車種等の点で他のメーカーとの徹底した差異化を図ることが、企業努力で不況を脱出するための一つの鍵になるのかもしれない。
ダ・シルヴァ氏は、「車を買いたい人はいるにはいるのですが、これまでとは違うモデルに魅かれるといったことがない限りは、実際に買うところまでいかないようです」として、今年末にも予定される小型の四輪駆動車等のニューモデル出現に期待をつなぐ。もっともそれとても、今後の経済情勢いかんといったところは拭えないけれど。