特集「パリのお菓子」

大型連休初日。遠出の予定はなく、雑誌を買い込んでぱらぱらめくっている。
フィガロジャポン』10月5日号の特集は「パリのお菓子」。誌面は予想に反して、意匠に凝ったパティシエたちの創作ケーキではなく、日頃から口にするような素朴な菓子(ブリオッシュなどの菓子パンも含む)でいっぱいだ。オテル・ドゥ・クリヨンに長く勤務していた有名パティシエであるクリストフ・フェルデル氏によれば、「以前はパティシエ本意の複雑なクリエイションが目立ちましたが、実際、食べる人は昔懐かしい伝統菓子に手が伸びる。そこでパティシエたちは、伝統菓子を見直し、フレーバーや見せ方を変え始めたのです」とのこと(62ページ)。まあそういう面もあっての特集なのだろうが、結局普通のパリジャン、パリジェンヌは(男女を問わず)、ずっと変わることなく、近所のパン屋で売っているお菓子を日常的に食べているわけで、『フィガロジャポン』誌がそこに改めて目を付けたということではないのかと思う。
前にも取り上げたパリの日本語フリーペーパー『OVNI』に、「パン屋さんのふつうのお菓子たち」という企画記事があった(2002年9月15日号)。「日本のコンビニぐらいの頻度で点在している」パン屋に並ぶ、エクレール(エクレア)やババといった菓子の紹介には大いに食欲をそそられたものだ。今回の特集にもそれと同じような感慨を覚える。もっとも、「点在している」そこらのパン屋ということだと『フィガロ』としては誌面を作りづらいので、いつものように(!)注目店をピックアップするという形は取っているけれど。
やっぱりパリらしいと思うのは、色鮮やかなディスプレイ。写真の一枚一枚がそれぞれ目を楽しませてくれる。ケーキのおいしいサロン・ドゥ・テ、さらにフランスではやや後景に退きがちなショコラティエも取り上げられていて実用的。この特集から情報を拾っておくと、ガイドブックとは違う切り口のパリ歩きができそうだ。
なお、第二特集として「東京発のフレンチスイーツ」が掲載されていて、こちらも素朴なお菓子を中心とした構成。なかでも、ピカルディ、サヴォアボルドーなど、フランス各地の名物菓子が東京でも一通り手に入るという記事が、ちょっと意外で特に興味深く思われた。