格安キャリア、運行混乱に言い訳

最近になって日本でもいよいよ本格参入の動きが出ている格安航空会社。ヨーロッパでは1990年代に実施されたEUの航空自由化を背景として多くの企業が運航を開始し、現在では既存キャリアと熾烈な競争を展開するなど、大企業にのし上がりつつある会社も見られる。ただ、余裕のない機体繰りといった格安航空ならではの事情から、遅れや運休など、運航状況の悪化が生じる場合も少なくないようだ。9月3日付の『トリビューン・ドゥ・ジュネーブ』紙は、欧州ローコストキャリアの代表格、スイスに多数の便を飛ばしているイージージェットで今夏に起きた度重なる運航の乱れに関し、会社側へのインタビュー記事を掲載している(≪De retour normale≫, easyJet s’excuse. Tribune de Geneve, 2010.9.3, p.12.)。
今回新聞社の取材に応じたのは、イージージェット社の北部ヨーロッパ地域担当部長であるトーマス・ハーヘンセン氏。7月に同社のジュネーブ空港発着便等が多数遅延、運休になったことを認め、その対策として臨時に4機を調達して運航に充てた、それでも正常運航には十分でなかったので、さらに各便の発着時刻の見直しを行い、比較的フライト頻度の低い午後や早朝のフライトを増やした、結果的に8月は定時出発便90%、運休率1.5%となり、ほぼ通常の状態に回復できたと説明する。また、混乱に巻き込まれた乗客からの問い合わせ電話に対応する職員を4倍に増やしたとのこと。会社としてもこうした事態は経費増大、収益の悪化につながるわけだが、ハーヘンセン氏は収益の低迷を搭乗券の価格に転嫁することはしないと明言している。
ただ、全ての説明がクリアというわけではない。例えば記者が、運航実績の改善ぶりをより明らかにするために、(相当な乱れが生じていた)7月の状況を示してほしいと尋ねたのに対し、同氏は「それについてはノーコメント」と突っぱねた(情報開示できないぐらい惨憺たる数字なのか?)。また、「冬には雪の影響があり、次にアイスランドでの噴火の影響、そして夏には管制官のストもありました」と、外部要因に責任を多少とも転嫁するような発言もしている。
ハーヘンセン氏は、「11月に新就航するジュネーブ−フルガダ(エジプトのリゾート地)線、バーゼル−テルアビブ線は、いずれも予約で一杯です」と述べ、引き続き格安路線としてのイージージェットへの期待は大きいとの自信を見せる。しかしインタビュー全体のトーンは、(特に安定運航に関して)ローコストキャリアへの不安を示しているように思える。利用者の信頼を取り戻すために一層の改善努力をしなければ、結局航空会社も「安かろう悪かろう」「安いけれどリスキー(航行上の安全はともかく)」の原則を免れないということになってしまうのではないか。