年末に賑わいひとしお、卸売市場

卸売市場は基本的にプロフェッショナルのためのものであるけれど、東京なら築地に代表されるように、扱う品々の新鮮さが想起され、ひやかしの消費者にとっても何か心躍るところがある。フランスではパリ郊外のランジス市場(現在の「レ・アール」から同地に移転した)が圧倒的に有名だし規模も大きいが、もちろん地方でもそれぞれの市場が活動中。12月30日付のフランス北部地方紙『ラ・ヴォワ・デュ・ノール』は、リール市の郊外にあるフランス第2の卸売市場に取材し、その活況を伝えている(Le garde –manger de la métropole a revêtu ses habits de fête. La Voix du Nord, 2011.12.30, p.35.)。
リール市の北西側にあるロム公益市場は1972年の創設。官民共同出資による運営会社が管理等を担当し、40ヘクタールの土地で、5つの大規模企業をはじめ合計51の業者が野菜・果物を中心とした商いを展開している。2010年にここで取り引きされた商品は合計で約18万トン。大規模スーパーは独自の仕入れルートを持っているのでこの市場とは関わらないが、その他の小売店や露天商、またレストランなどがここから必要な農産品を仕入れていく。
取材がなされた12月後半はまさにクリスマス休暇に当たり、消費者の購買も盛んになるため、市場の売り上げも平常時比30%以上増と活況を呈する。開場の午前6時はいつでも賑わいの時間帯だが、この時期はとりわけ人通りも多く、商品を積んだ荷台がひっきりなしに通路を行き交い、1日で80トンもの荷を捌く会社もあるとか。当市場の5大業者の一角を成すバレステル社の販売担当責任者、クロード・ジュラーニ氏は、「クリスマスは一般家庭の方が(自宅で料理をするために)買物をされる時期です。一方新年は、みなさんレストランに行く傾向が強いようです」と動向を分析。「いずれにしてもお祝いのシーズンですから、ふだん頻繁には食べない類の果物、それから何につけ高級品が良く売れます」とも説明する。グズベリー、ライチ、パイナップル、マンゴー、あるいは柑橘類などを、生牡蠣やフォワグラの傍らに配するというのが、最近この季節のパーティー料理のスタイルになっているのだという。
ちなみにこの市場では2005年以来改修を実施しており、開場40周年である2012年にその完了を迎える。ノール−パ・ドゥ・カレー地域圏、ノール県、リール大都市圏都市部共同体といった地方自治体を中心に2,300万ユーロ以上の経費を支出し、建物の拡張と外壁装備、商品台の設置と整備、駐車場への屋根敷設といった工事を行った。こうした改修の結果、新たに花卉のセンターが場内に設けられ、また新たに肉類を取り扱う卸売商の受け入れも決まったというから、単なる利便性の向上ではなく、営業範囲の拡大といった効果も生じることになる。魚は引き続き基本的には扱わないようだが、今後ますます、フランス北部地域の胃袋を支える施設としての存在感は増しそうな感じだ。