製菓用板チョコの品評会を真剣敢行

日本の冬はチョコレートの美味しい季節。種類も実にさまざまでギフトに喜ばれる。ベルギーやフランス産のチョコは存在そのものが贅沢な感じを与えるようだが、もちろん高級なものばかりがあるわけでなく、普通の菓子同様にその裾野は広い。またそうした裾野の部分が、トップレベルのチョコのクオリティを支えていると言えるのかもしれない。グルメ専門誌『キュイジーヌ・エ・ヴァン・ドゥ・フランス』12月・1月号は、製菓用チョコのタブレット8種の食べ比べ品評会の様子を報告している(Les tablettes de chocolat à pâtisser. Cuisine et Vins de France, 2011.12-2012.1, pp.144-145.)。
御存知の通り、チョコレートの主成分はカカオマスカカオバター、そして乳化剤や香料(バニラ系のものが中心)が加わることが多い。またEU規則では2003年以降、カカオ由来以外の植物性油脂を5%まで添加することが正式に認められている。一般に美味しいチョコは、風味にバランスが取れており、果実性の香り、また苦みがわずかにあって、かつ過度に甘ったるくないものと総合的には表現されるけれど、こうした良し悪しを製品表示の外見から判断するのは不可能に近い。カカオ分の含有比率は50%、70%といった形で示されているが、カカオマスカカオバターの比率は成分含有表に出てこない。また香料使用の有無は表示されても、それが人工のものか自然由来のものかは明らかでない。
そこでこの雑誌では、8種類のワインならぬ製菓用板チョコのブラインド・テイスティングを敢行した。集まったのは有名店フォション、高級チョコ店として知られるア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユ、そしてジャディ・エ・グルマンド、さらにリッチな菓子全般を扱うフーケなどから呼ばれたいわばチョコレートのプロフェッショナルたち9名(編集部の2名を含む)。ブルターニュに本拠を置くアンリ・ル・ルーから石井真己登氏も参戦している。各タブレットは、全員の評価をまとめた上、それぞれ20点満点(フランスのテストでの通常採点方式)で判定され、1位のリンツ(スイス)は17点を獲得、ネスレが16点でこれに続いた。一方最下位(名前を秘すが、某スーパーのプライベートブランド)は9点にとどまっている。評価の高いチョコについては、舌触りがなめらか、歯応えあり、心地よい苦みなどが審査員の着眼ポイントとして挙がっているのに対し、下位のものには、舌触りがぱさついている、脂っぽい、甘さが香りを消してしまっている、後味が悪いなどの指摘が付されている。人の好みはいろいろであるにせよ、チョコに一家言持つベテランたちが与えている評点なだけに、それなりの重みはあるだろう。
評価の対象になった板チョコはいずれも200グラムのもので、値段は1ユーロから3ユーロまでの幅があるが、必ずしも高いものが上位を占めているわけでないというのも面白い。「お遊び」の要素ありと割り切りつつ、多少はこの結果を購買行動の参考にしてみてもよいのかもしれない。