チコリ生産農家を価格カルテルで摘発

最近になってだいぶ野菜サラダなどに使われることが増えてきたチコリ。フランスは世界一の生産国(年間20万トン)で、北部地域やブルターニュ地方で主に収獲されているが、このほど政府の競争当局によって、生産者がカルテルを結んでいたとの認定を受け、金銭的制裁を課せられることになったという。3月7日付『ル・フィガロ』紙はこの「事件」の概要、そして根深さについて説明している(Une amende de 3.6 millions d’euros pour les producteurs d’endives. Le Figaro, 2012.3.7, p.21.)。
本件は、フランス経済財政産業省の付託の下、独立した行政機関である競争委員会が徹底した調査を行い、明らかとなった。生産者団体が連合して、販売最低価格を定め構成員に守らせるという形でのカルテルを、なんと14年も前から現在まで取り決めて来ていたといわれ、金銭的制裁として総額360万ユーロを支払わせるとの決定が下されている。生産者側はパリ控訴院に上訴の構えとみられるが、上訴中も行政措置の執行は停止されないため、さしあたり各団体が所属する県に対して制裁金を納付することになる。
2007年から行われてきた競争委員会の調査では、チコリ生産業界の根深いカルテル体質の実態が明らかになっている。まず、生産者団体の調整のもとで「アンフォクラール」という情報システムが1998年に開発され、このシステムを通じて個別農家が付ける売値が既定の最低価格を上回っているか、リアルタイムで把握、監視ができるようになって、価格水準の維持が秘密裡に実施された。競争当局から何度か注意、警告を受けた後は指示方法を変え、連絡は全て口頭で行い、絶対にその痕跡を残さないようにとの通知が出されたという。また、こうした実態に反旗を翻したあるチコリ農家に対しては、組織的な脅しをかけ、また実際に報復措置を取る(その農家が出荷した野菜の流通を妨害するといったあたりだろうか)こともあったようだ。
競争法の理念からして、こうしたタチの悪い不正行為には厳しく臨まなければならないというのが競争委員会の基本的な考えだろうが、それでもある種の情状酌量を施した形跡は伺える。本件のようなケースに適用される制裁金額を通常の計算式に基づいてはじき出すと3,800万ユーロとなるものの、実際に課せられた額はその10分の1以下でしかない。これは、チコリの年間販売額がたかだか1億3,000万ユーロ弱でしかないという事情を(いくら経年にわたる悪質カルテルだとしても)汲んだ結果であろうと考えられる。大きいとは言えない生産業界に対して、その存立をも脅かしかねない制裁を実施するのは不適当といった考慮が働いたということか。
なお、農産物に対して競争委員会の摘発がなされるのはこれが初めてというわけではなく、これまでにも、イチゴ(2003年)、カリフラワー(2005年)、そしてとうもろこし(2007年)の生産者に対して、類似の制裁がなされた経緯もある由。個別の農家が仮に小規模でも、特にその連合組織や各種団体が競争法に反する行為に及ぶのは、農業と他の産業とを問わず許されないという姿勢がはっきりとられていると言えるだろう。