2010-01-01から1年間の記事一覧

電子書籍、普及への道まだ遠く

今年は何やら「電子書籍元年」という言葉があちこちから聞こえる。ここ20年ぐらい、本が電子媒体に移行しそうだという話は何回か出て消えたという実績もあるので、にわかに信用し難いという気持ちもあるのだが、電子書籍なるものの内実はともあれ、ビジネス…

内相の見る若者騒乱

不況や貧困といった社会環境を遠因としたフランスの若者騒乱の波はとどまるところを知らない。パリ発の日本語フリーペーパー『OVNI』紙は時事解説コラムで校内暴力を取り上げ(6月1日号)、教師への暴力や生徒間のいじめなどが傷害事件に至るケースの増加な…

むべなるかな、投資信託は縮小気味

90年代以降、日本の金融界が激動を続ける中で、個人金融の分野では「貯蓄から投資へ」というスローガンがもてはやされてきた。一般の人々も銀行預金だけでなく、もっと証券投資に関わってはという呼びかけだったかと思うけれど、その結果は現在どうなってい…

ユーロ安は旅行客誘致にはプラス

ギリシャの財政危機をきっかけとして一気に進行したユーロ安。通貨の信認という点ではもちろん褒められた話ではない(ユーロのようなある種の実験通貨はなおさら)が、輸出産業などに相当の恩恵をもたらしていることは間違いない。観光関係も外国からの旅行…

外国出身の神父さんが増えている

自分には具体的なイメージが湧きにくい分野だが、カトリック教会における聖職者任命の秘跡である叙階の場は、相当厳かな雰囲気に包まれているに違いない。ただやはり、フランスでの叙階をめぐる状況が、変化する時代の波を受けつつあるのは確か。6月27日付の…

25周年、一層の発展を期す写真美術館

写真専門の美術館というと、とりあえず恵比寿の東京都写真美術館(1990年プレオープン)が思い浮かぶが、媒体の美術性が認められたのが最近であるためだろう、施設の歴史は全体に浅いようだ。ローザンヌにあるエリゼ写真美術館も1985年オープンなので、いわ…

財政面でローザンヌと州内自治体の対立激化

隣りの芝生は青いというけれど、市や町のレベルでもついつい近隣と比較する気持ちが芽生えるもの。そんな気持ちの発露か、ローザンヌ市を州都とするスイスのヴォー州では、そのローザンヌとその他の市町村の間で、財政面の激しい対立が起こっているという。6…

海岸トラム運行125周年を祝う

ベルギーの『ラヴニール』紙の記事を見つけたとき、これは不覚だったと思った。マニアではないが一介の鉄道好き、特にトラム(日本でいう市電)に興味を持っている者として、ベルギーにこれほど魅力に溢れたトラムがあることをここまで知らずに来たとは!全…

スーパーモノプリの高級店舗が登場

古き良き食料品店への郷愁が残るフランスも、現実は大規模小売店が席巻する社会。有名度と影響力ではカルフール、オシャン、E・ルクレールといったハイパーマーケット(巨大ショッピングセンター)の方が上だろうけれど、いわゆる中小スーパーも数多く、市…

航空界は今日も視界不良

ヨーロッパの航空業界はここ10年以上激変の波にさらされている。激安航空会社の台頭、相次ぐ合併吸収、そして小国を中心としたナショナルフラッグ・キャリアの消滅など。ベルギーはスイスとともにこの3番目の事例に直面したわけだが、代替航空会社が設立され…

傍若無人なサイクリストにイエローカード

5月から6月、梅雨に向けてじめじめしがちな日本とは異なり、いよいよ天候が安定し絶好の季節となる北部・中部ヨーロッパ。この時期のサイクリングと言えば、自転車が全国民的に普及し活用されているオランダがまず思い浮かぶが、南隣りのベルギーも比較的平…

未来を拓く老化メカニズム研究

日本ほどではないにせよ、軒並み人口の高齢化が進むヨーロッパ諸国。2030年時点での65歳以上の人口の割合は、ドイツとイタリアを筆頭格に、ほとんどの国で20%台に達することが予測されている。そこで、医学や生理学の観点から注目されているのが老化のメカ…

パリ市が打ち出すローラン・ギャロス改修計画

今はちょうど全仏オープンが盛況のうちに幕を閉じたところ。会場であるローラン・ギャロスはパリ市内(16区)にあり、ブーローニュの森に隣接していて、ウィンブルドンや全米オープンのフラッシング・メドウズと比べると都心に近い好立地と言えよう。ただ難…

「カンヌらしい名物」はいずこに

国際映画祭が終わって落ち着きを取り戻しつつも、リゾート地らしい賑わいが続くカンヌ。ところがここでは、映画祭を除くと周りのリゾートに比べて街としての「売り」がないことが、観光業界の大きな悩みらしい。ニースと言えばサラダやオリーブオイル、マン…

温暖化でどうなる発泡ワイン

やや天候不順気味ではあるが、初夏の陽光が眩しい季節。こんな時期は少し冷やした発泡ワインなどいただくのが楽しいかも、と思いながら『ル・フィガロ』紙を見ていると、さすがは本場、5月13日付でワインと環境問題の関連について書かれている(Le réchauffe…

新美術館にロレーヌの期待は熱く

フランスのいわゆる三大美術館のうち、現代芸術部門の収蔵、展示を担うポンピドゥ・センター。その分館がロレーヌ地域圏にできたという報道は日本の新聞にも出ていた(と思ったら、印象派を特集している雑誌『カーサ ブルータス』6月号にも書かれていた)が…

国立図書館蔵書デジタル化の今、これから

近頃は電子書籍だケータイ読書だなどといろいろかまびすしいが、主として米国発の書籍デジタル化の潮流は、読書をめぐる環境に相当の影響を与えずにはおかないだろう。最近の動きは大きく分けて、新しく刊行される「出版物」がデジタルの形を取っている場合…

外食の税引き下げ、効果は今一つ

昨年7月1日に外食に関する付加価値税の税率が引き下げられたことについては以前このブログに書いた(2009年7月12日)。外食産業の経営者団体と政府により昨年4月に官民協定が締結され、付加価値税をそれまでの19.6%から5.5%に引き下げるとともに、外食産業側…

麦価暴落で農民デモ

EUが推進する農業自由化がもたらしている困難については、以前スイスの乳業事情として触れたことがある(当ブログ2月13日)が、今回は小麦。麦価低迷により生活が成り立たないとして、パリとブリュッセルで小麦農家による同日デモが敢行された。4月28日付…

「経済発展は大企業が頼り」

近年の金融危機のあおりを受けて各国で槍玉に挙がったのが、金融業界はじめ大企業全般で見られる幹部の高額給与。フランスでも事情は同じで、一部に規制がかけられたりしているが、それでなくても大企業は一般に批判的な目で見られがちだ。これに対し4月15日…

王立美術館の古典絵画に偽物疑惑か

ブリュッセルの高台、王宮のすぐそばにあるベルギー王立美術館は、ブリューゲルをはじめとするフランドル古典絵画と、アンソール、マグリット、デルヴォーなどの現代絵画それぞれの豊富なコレクションで知られる。ルーベンスの弟子で、主に肖像画家として17…

討論番組の人気司会者はあくまで謙虚

フランスに興味のある方ならたいていご存知のように、日々放送されているテレビ番組は日本に比べるとだいぶ地味な内容だ。いわゆるゴールデンタイムの放送でも、映画やドラマのウェイトが高く、お笑いや歌番組は少ない。あとは主にトーク番組とドキュメンタ…

期間限定遊園地の愉しみ

ヨーロッパ各地では常設でない遊園地をときどき見かけることがある。大きな公園や広場に、ある日メリーゴーランドや小規模のジェットコースターなどのアトラクションがお目見えし、何日かたつと撤去されているというような。サーカスに近いイメージで考える…

電子投票、紙に逆戻り?

もうだいぶ手垢の付いたことばだけれど、「電子政府」論というのはいまだに存在していて、その一部に「電子投票」をめぐる議論がある。ベルギーはその先進国であると言われ、実際に90年代からそれなりの実績を積み上げてきた。ところがここに来てその雲行き…

ナショナルブランド・ビール、その歴史といま

フランスでビールが占める位置はけっこう微妙である。カフェやレストランでの飲み物としては手軽で悪くないのだが、いかんせんワイン大国だけあって影が薄くなりがち。1人当たりのビール消費量は、ヨーロッパではイタリアに次ぐ低水準。地ビールも北部や東部…

地方選、棄権の多さをどう見る

日本の新聞でも伝えられているが、フランスの地方圏議会議員選挙(約1,900人の議員が選ばれる統一地方選挙)の結果は、政権与党(国民運動連合)の敗北、社会党などの躍進などと報じられている。一方特に注目されたのが投票率の低さ。2回あった投票のどちら…

『シャンソン 街角の賛歌』

植木浩『シャンソン 街角の賛歌』(講談社、1984)読了。著者は1931年生まれ、NHKの音楽番組ディレクターから文部事務官に転身した経歴を持つ。その後文化庁長官(1988〜1990年)、東京国立近代美術館長などを経て、現在は箱根のポーラ美術館館長を務めてい…

岐路に立つ国際情報発信

文化交流の媒体、ひいては一種の外交ツールであり、国外に居住する自国民に対する情報伝達手段でもある国際放送。かつては短波ラジオ放送が中心だったが、最近はインターネットを通じた画像、音声、動画の提供がメインになりつつあるようだ。ただ、グローバ…

ギリシャだけじゃない南欧諸国の経済不安

新聞で日々報じられていることのおさらいみたいな部分が多いかもしれないが、今日はEU経済危機の最近の動向について。日本ではもっぱらギリシャ一国が最近の危機の元凶のような報道が多いように見えるけれど、2月25日付『ヴァン・ミニュート』紙は、問題は…

別れても同居人

以前、社会主義体制下の東ヨーロッパでの住宅事情について調べていたとき、当時は都市部でアパートを探すのがとても難しく、仮に離婚してもどちらかが家を移ることもできずに、相変わらず同じ世帯に暮らしていることが少なくないと、半ば自嘲気味の話を何回…